近年、従業員の健康管理を経営戦略に組み込む「健康経営」への注目が高まっています。本記事では、その取り組みを評価・認定する「健康経営優良法人制度」について、認定のメリット・デメリットや申請手続きの流れなどを詳しく解説します。
企業の健康経営を実践するのに役立つ具体的なサービス例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目 次
健康経営優良法人とは?どこが認定している?
健康経営優良法人認定制度は、従業員の健康管理を経営的視点で戦略的に実践する企業を評価・認定する仕組みです。経済産業省の主導のもと、日本健康会議*が認定します。
この制度は、健康経営を通じて社会的な責任を果たし、従業員の健康の増進や働きやすい職場環境づくりの推進などに取り組む企業の社会的評価を高めることを目的としています。
企業の取り組みを認定制度により「見える化」することは、健康経営の理念を普及させ、社会全体の健康意識向上にも寄与します。
*日本健康会議:経済団体、医療団体、保険者などの民間組織や自治体が連携し、国民健康保険の健康寿命延伸と適正な医療を目指して取り組む組織
健康経営優良法人の種類とランク
健康経営優良法人制度では、業種と企業規模に応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」に分かれており、それぞれ申請手続きや評価方法が異なります。
業種 | 大規模法人部門 | 中小規模法人部門(いずれかに該当すること) | |
---|---|---|---|
従業員数 | 従業員数 | 資本金または出資額 | |
卸売業 | 101人以上 | 1人以上100人以下 | 1億円以下 |
小売業 | 51人以上 | 1人以上50人以下 | 5,000万円以下 |
サービス業 | 101人以上 | 1人以上100人以下 | 5,000万円以下 |
製造業その他 | 301人以上 | 1人以上300人以下 | 3億円以下 |
※「会社法人上の会社等」または「士業法人」の場合
※従業員数が大規模法人部門に該当し、かつ資本金または出資金額が中小希望法人部門に該当する場合は、大規模法人部門・中小規模法人部門のいずれかに申請することが可能です。(両部門に申請することはできません)
出典:健康経営申請区分|経済産業省
大規模法人部門では、上位500法人に「ホワイト500」の称号が与えられ、中小規模法人部門では、上位500法人に「ブライト500」、501位から1500位に「ネクストブライト1000」の冠が与えられます。
中小企業が健康経営優良法人の認定を目指すメリット
中小企業が健康経営優良法人の認定を受けると、企業活動に多くのメリットを得られます。ここでは、具体的な効果をご紹介していきます。
■ 生産性向上につながる
健康経営の取り組みにより、従業員の健康状態が改善されると、結果的に生産性の向上が期待できます。具体的には、病気による欠勤が減少し、業務効率が向上することで、職場全体のパフォーマンスが高まります。
さらに、健康経営の実践を通じて従業員満足度(ES)が高まれば、組織内のモチベーションも向上し、企業全体の競争力強化にもつながるでしょう。
■採用・企業ブランディングを強化できる
健康経営優良法人として認定されると、企業の社会的評価が向上します。働きやすい環境や健康的な企業文化をアピールできるようになり、優秀な人材の確保や企業ブランディングの強化につながることがメリットです。
認定企業としての信頼感が高まると、既存従業員の満足度・企業ロイヤリティも向上し、離職率の低下にもつながります。
■ 金融機関の優遇措置がある
一部の金融機関では、健康経営優良法人に対して金利の引き下げなどの優遇措置を提供しています。例えば四国銀行では、健康経営優良法人の認定を受けた企業は、最大0.5%までの優遇を受けられる「健康経営サポート融資」をおこなっています(2024年11月現在)。
優遇の対象となれば資金調達のコストを削減しやすくなり、経営資金の負担が軽減されることも、中小企業にとっては大きな魅力です。
■保険料の割引がある
保険会社によっては、健康経営優良法人に対して保険料の割引や特典を提供する場合もあります。例えば三井住友海上あいおい生命では、対象企業に対しては、被保険者数に応じて保険料率を0.8%〜4.2%優遇しています(2024年11月現在)。
従業員の福利厚生コストの削減は、企業全体の運営費用の最適化にもつながるでしょう。
■自治体や公共団体からの支援を受けられる
健康経営優良法人は、国や自治体の補助金や税制上の優遇措置の対象になるのもポイントです。
例えば中小企業向けの「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」や「IT導入補助金などは、健康経営優良法人であることは加点対象とされています(2024年11月現在)。
健康経営に取り組むと、経済的支援を受けながら、経営基盤を強化できることもメリットです。
中小企業が健康経営優良法人を目指すデメリット
健康経営優良法人の認定に向けて取り組むことには、デメリットもあります。
■効果を実感するのに時間がかかる
健康経営の取り組みは、即時に効果が現れるものではなく、成果を実感するまでに時間がかかる場合があります。例えば、従業員の健康改善による生産性向上といった効果は、数年単位でじわじわと現れるのが一般的です。
そのため、短期的な利益を重視する企業にとっては、取り組みへのモチベーション維持が課題になりがちです。持続的な取り組みを成功へ導くには、長期的な視点で計画を立てることが重要だと理解しておきましょう。
■従業員の理解を得る努力が必要
健康経営を効果的に推進し、社内に浸透させるためには、従業員一人ひとりの理解と協力が不可欠です。しかし、施策が導入されても、すべての従業員がその重要性を理解して、積極的に参加してくれるとは限りません。
とくに初期段階では、従業員の関心を引くための周知活動や、意識改革の取り組みが求められます。これらには時間と労力がかかりますが、施策を定着させるには、粘り強く従業員とコミュニケーションを取り続けることが重要です。
■申請手続きの負担が重い
健康経営優良法人の認定取得のための申請手続きは、多くの中小企業にとって負担となる傾向があります。書類作成や情報収集、データ分析など、申請手続きそのものに多くの時間と労力が必要です。
とくに初めて申請する企業にとっては、制度の詳細を把握するのにも時間がかかり、手続きの複雑さが負担となりがちです。そのため、外部の専門家やサポートの活用が必要になる場合もあるでしょう。
健康経営優良法人の認定基準と申請手続き
健康経営優良法人の認定基準と、具体的な申請手続きの手順などを解説します。
■5つの評価項目
健康経営優良法人の認定は、以下の5つの評価項目に基づいておこなわれます。これらの基準は、企業の健康経営の成熟度を判断するための、重要な指標となります。
評価項目 | 内容 |
---|---|
経営理念・方針 | 健康経営に関する経営層の意識と方針が明確になっているかを評価します |
組織体制 | 健康経営推進のための組織的な体制が整備されているかを評価します |
制度・施策実施 | 具体的な健康増進施策の実施状況が確認されます |
評価・改善 | 施策の効果を測定し、継続的な改善活動がこなわれているかを評価します |
法令遵守・ リスクマネジメント |
関連法令を遵守し、リスク管理が適切になされているかを評価します |
これらの評価項目を通じて、企業がどの程度戦略的に健康経営を実践しているのかを明らかにし、評価します。
■中小規模法人の申請ステップ
中小規模法人が認定を受けるためには、以下の手順を踏む必要があります。
- 1. 加入している保険者が実施する健康宣言事業に参加する
- 2. 健康経営優良法人認定申請書を作成する
- 3. 専用サイトから申請書を提出する
- 4. 認定委員会による審査を受ける
- 5. 日本健康会議から認定を受ける
詳細な手続きやスケジュールについては、経済産業省の公式ウェブサイトを確認するようにしてください。
■大規模法人の申請ステップ
大規模法人が認定を受けるための一般的な手順は以下のとおり
- 1. 健康経営度調査に回答・健康経営優良法人に申請する
- 2. 認定委員会による審査を受ける
- 3. 日本健康会議から認定を受ける
大規模法人についても、詳細な手続きやスケジュールについては、経済産業省の公式ウェブサイトを参照しましょう。
参考:健康経営優良法人の申請について|経済産業省
健康経営の実践に役立つサービス
ここからは、企業規模や業種を問わずに取り組める、健康経営の効果的な推進に役立つサービスをご紹介します。
■フィットネスクラブの法人会員制度
フィットネスクラブの法人会員制度は、従業員の健康維持や運動習慣を定着させるのに有効です。従業員は、仕事帰りや休日に気軽に運動できる環境を利用でき、運動により心身をリフレッシュできます。
企業側にとっては、福利厚生の一環として健康経営を強化できるのに加え、従業員満足度やエンゲージメント向上といったメリットも得られます。
■オンラインセミナーや健康指導
オンラインセミナーや健康指導は、時間や場所に縛られにくく、幅広い従業員に健康系の取り組みを浸透させる手段として人気です。さまざまな企業が栄養管理やメンタルヘルス、運動指導など、専門家による多彩なセミナーを提供しており、従業員の健康意識向上に貢献しています。
オンラインセミナーならリモートワーク環境でも取り組めるため、効率的に健康経営を推進できることもメリットです。
■COSPAウエルネスのプラン紹介
COSPAウエルネスでも、従業員の健康維持を支えるさまざまなプランを提供しているのでご紹介します。
①フィットネスクラブの法人会員制度
COSPAウエルネスでは、フィットネスクラブの法人会員制度を3種類提供しています。
プラン | 特徴 |
---|---|
コ・ス・パ共通法人会員制度 |
・複数のコ・ス・パ、FITBASE24(24時間ジム)を利用できるプラン ・従業員の人数にかかわらず、利用頻度に応じた年会費を選択できる ・コーポレート会員制度を含む多彩なサービスを活用できる |
コ・ス・パ個店法人会員制度 | ・特定の1店舗を利用できるプラン ・特定店舗を気軽に利用できる、使い勝手がよい ・従業員数が少ない企業に適している |
全国法人会員制度 | ・コ・ス・パをはじめとした、全国の提携フィットネスクラブを利用できるプラン ・広域展開する企業でも、地域を限定せずに公平な福利厚生制度を導入できる |
②出張・オンライン 健康セミナー
栄養、運動、心理面から、ヘルスリテラシーを高めるセミナーを、出張やオンライン形式で開催します。「メタボ対策」「疲労対策栄養指導」「職場の腰痛・肩こり対策」「ココロとカラダのリラクゼーション」「メンタルヘルスケア」「姿勢改善」など、多彩なテーマに対応しており、ご希望に応じてオーダーメイドのプランのご提供も可能です。
③出張測定イベント(運動指導)
従業員の健康を促進するための測定イベントを実施します。筋力や柔軟性、体組成、血管年齢などを測定し、現在の健康状態を詳しく把握します。その結果をもとに、日常生活の健康改善のヒントや、運動習慣の取り入れ方などについてアドバイスをおこないます。
④企業向けオリジナル体操
職場の業務内容にあわせたオリジナル体操を企画・提供します。デスクワーク向け、立ち仕事向けなど、業種や業務内容に最適化した体操は、従業員の健康維持やメンタルヘルス対策だけでなく、現場の事故防止などにも貢献します。
⑤オフィスフィットネス
オフィス内にフィットネスマシンやストレッチ設備などを設置して、授業員が手軽に運動することで健康維持に取り組める環境を整えるプランです。業種や企業規模、スペースに応じたプランを提案し、健康経営や生産性の向上をサポートします
まとめ
健康経営優良法人認定は、企業が健康経営へ取り組む姿勢を社会にアピールし、社会的評価を高める制度です。生産性の向上や採用強化、各種優遇措置など多くのメリットがある一方で、効果を感じるまでの時間や申請手続きの負担といった課題もあります。
COSPAウエルネスでは、フィットネスクラブの法人会員制度をはじめ、健康経営を支援するさまざまなプランを提供しています。まずはこちらから詳しい内容をチェックしてみてください。