健康経営を実現するためには、従業員の健康保持・増進を日常生活の中で支援するための仕組みづくりが欠かせません。その中でも、毎日の「食事」や「食育」へのアプローチは、生活習慣を根本から支える施策として注目が高まっています。
本記事では、健康経営における「食」の取り組みをテーマに、導入で得られるメリットや実践アイデア、実際の企業事例などをご紹介します。これから施策を始めたい方はもちろん、既存の取り組みを見直したい方も、ぜひお役立てください。
目 次
健康経営における食事・食育施策の重要性とは?
ここでは、なぜ食事・食育の観点が健康経営において重視されるのか、その背景と意義を解説します。
そもそも健康経営とは
健康経営とは、従業員の健康保持・増進を企業の経営戦略に組み込み、持続的な成長を目指す考え方です。健康経営によって、生産性の向上や企業価値の強化が期待されており、経済産業省などの行政機関も積極的に推進しています。
実際に、採用競争力の向上や離職防止といった実務的な効果が評価され、健康経営を導入する企業は年々増加傾向にあります。こうした流れは、働きやすい職場環境づくりへの関心の高まりとも重なり、今後も加速していくと見られています。
健康経営で食事・食育施策が注目される理由
健康経営を実践するうえで、従業員の健康に直結する「毎日の食事」は、最も身近でありながら効果が期待できる施策のひとつです。とくに、業務中のパフォーマンスや長期的な健康状態に影響を与える要素として、注目度が高まっています。
特定保健指導や健康診断といった取り組みでは十分に届きにくい、"生活習慣そのもの"にアプローチできる点も、食事・食育施策の大きな特徴です。日常的な食生活を改善することで、生活習慣病の予防や集中力・体調の維持といった成果につながることが、企業から評価されている要因といえるでしょう。
健康経営で食事・食育施策をおこなうメリット
食事・食育の取り組みを福利厚生の一環として導入することで、企業にもたらされる効果は非常に大きいとされています。ここでは、健康維持から業務パフォーマンス、組織づくりまで、4つの視点から具体的なメリットを解説していきます。
従業員の健康維持・生活習慣改善につながる
日常的な食事から栄養バランスを整えることは、生活習慣病の予防や肥満対策に直結するため、健康経営における基本的かつ効果的なアプローチといえます。
また、「何を選ぶか」「どう食べるか」といった意識づけが日々の中で繰り返されることで、健康的な行動が自然と習慣化されやすくなります。こうした行動変容は、長期的な健康維持につながる土台となるのがメリットです。
さらに、健康課題に起因する短期・長期の休職や、プレゼンティーズム(体調不良によるパフォーマンス低下)を防ぐ効果も期待されます。結果として、企業全体の稼働率や生産性を安定させることにも寄与するでしょう。
医療費を抑制できる
予防的な食事施策は、重症化リスクを下げることで医療費全体の増加を抑える効果が期待できます。とくに、食生活との関連が深い高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、改善によるインパクトが大きく、継続的な予防が重要です。
また、こうした取り組みは企業にとってもメリットがあります。具体的には、健康保険組合の費用負担の軽減や、従業員の休職・復職対応にかかるコストの削減に寄与し、経営面での負担を抑える結果につながります。
組織の生産性・エンゲージメントが向上する
食生活の改善は、従業員の体調を安定させ、集中力を維持することに役立つため、日々の業務パフォーマンスを高める効果が期待できます。安定した体調は、業務効率の底上げにもつながります。
また、健康支援への投資は、従業員にとって「大切にされている」という実感を得やすく、企業へのロイヤリティを高める要因となります。こうした信頼関係は、離職防止や職場満足度の向上にも寄与します。
さらに、食を通じた健康施策が「働きがいのある職場づくり」と連動することで、組織全体の活性化やエンゲージメントの強化も見込まれます。
離職率低下や採用強化にも好影響を与える
食生活の支援を含む健康経営への取り組みは、企業ブランディングの一環として機能し、求職者に対する印象の向上にもつながります。とくに「社員の健康を考える会社」という姿勢は、福利厚生の充実として高く評価されやすい傾向があります。
その結果、定着率の向上や採用競争力の強化といった効果が期待でき、人的資本の維持・確保においても有効な施策となるのがメリットです。健康的な食生活を支援することは、働きやすさと安心感を提供する一助となり、これからの企業運営に欠かせない視点といえるでしょう。
健康経営における食事・食育施策の具体的な取り組み
健康経営を効果的に推進していくには、現場の状況に即した、実行可能な施策の設計が重要です。ここでは、食事・食育支援の具体的な施策を紹介します。
社員食堂やデリバリー型ランチの導入
社員食堂の設置やデリバリーランチの活用は、栄養バランスの取れた食事を手軽に提供できる手段となります。毎日の昼食の選択肢として健康的なメニューを用意することで、従業員の食習慣改善に寄与します。
中小企業では社員食堂の設置が難しいことも多く、デリバリー型ランチサービスの活用が、現実的かつ導入しやすい選択肢となるでしょう。
導入時にはメニューに選択肢の幅を持たせると、従業員のライフスタイルや嗜好に合わせたより柔軟な健康支援が可能になります。
食育・健康セミナーを通じた知識の定着
食育や健康リテラシーを高めるセミナーは、従業員が主体的に健康管理に取り組むきっかけとなります。自分の健康について正しく理解することは、日常の選択行動を変える第一歩です。
栄養学や生活習慣病予防などをテーマに、定期的な研修・講座を開催する企業も増えており、社内教育の一環として活用されています。
なお、こうしたセミナーは知識を与えるだけでなく、具体的な行動変容を促す設計が成果を左右します。COSPAウエルネスでも、出張・オンライン形式での食事・健康に関するセミナーを提供しており、従業員の学びと実践をサポートしています。ぜひ以下から内容をご確認ください。
管理栄養士・保健師による相談体制の整備
管理栄養士や保健師による個別相談窓口を設けることで、従業員一人ひとりの具体的な課題に寄り添った支援が可能になります。体質や生活環境に応じたアドバイスは、汎用的な施策ではカバーしきれない部分を補ってくれます。
また、食事・食育施策と連動させて相談体制を整えることで、より高い行動変容効果が期待できる点もメリットです。従業員が学びと実践を往復しやすい環境が整えば、健康意識も自然と定着していくでしょう。
さらに、定期的な面談やフォローアップの機会を設けることで、生活習慣改善へのモチベーションを持続させる支援にもつながります。
食事・食育施策は福利厚生制度として経費計上できる
食事・食育施策に加え、健康セミナーの実施や管理栄養士による相談体制の整備なども、一定の条件を満たせば福利厚生費として損金算入できる場合があります。
たとえば、昼食補助やデリバリーサービスの導入、健康講座の開催といった、健康経営に資する多様な施策に対して、経費面でのメリットを得ることが可能です。
ただし、福利厚生費としての適用を受けるには、全従業員を対象としていること、支給内容や金額が社会通念上妥当であることなど、税務上の基準を満たしている必要があります。導入前に税理士や専門家に相談し、適切な設計と運用を心がけましょう。
食事・食育施策を取り入れた企業の成功事例
食事・食育施策を実際に導入し、成果をあげている企業の取り組みを紹介します。導入の目的や工夫など、自社での施策を検討する際の参考になるでしょう。
味の素株式会社
味の素株式会社では、「味の素グループで働いていると、自然に健康になる」というビジョンを掲げ、食を軸とした健康経営を積極的に展開しています。
具体的には「適性糖質セミナー」を実施し、糖質コントロールに対する正しい知識の定着を図るほか、ウォーキングイベントの開催を通じて日常的な運動習慣の定着も後押ししています。
また、社内では「AFT健康習慣3項目(食時・睡眠・運動の時間管理)」の実践を奨励し、従業員の意識・行動の底上げを図っています。こうした多面的な施策により、社員とその家族の健康寿命延伸を目指す環境づくりが進められています。
参考:健康経営|味の素株式会社
株式会社日本能率協会マネジメントセンター
JMAMでは、さまざまな食・運動施策を組み合わせて実施することで、労働生産性の向上を目指しています。具体的には、2025年末までに、アブセンティーズム2.5日、プレゼンティーズム78%の実現が目標です。
そのために、食事管理アプリを用いて栄養バランスやカロリー摂取量の"見える化"を促進し、野菜摂取量の測定イベントやウォーキングイベントなどを実施しました。従業員が自らの生活習慣を振り返るきっかけをつくり、継続的な改善につなげています。
参考:健康経営先進企業事例集2025|健康長寿産業連合会
健康経営宣言|株式会社日本能率協会マネジメントセンター
artienceグループ
artienceグループでは、健康な食事と食環境の提供を重視し、社員食堂において「スマートミール」の認証を取得しています。スマートミールとは、健康的な食事を基準に沿って提供する事業者や施設を認証する制度です。厚生労働省や日本栄養改善学会などが連携して推進しており、バランスの取れた食事の普及を目的としています。
artienceグループでは、本社や主要製造所を含む全国8拠点で認証を受け、栄養バランスの取れた食事を日常的に提供する体制を整えました。こうした取り組みにより、従業員の健康維持と生活習慣病予防を食から支える職場環境づくりが実現されています。
参考:健康経営|artience株式会社
食事・食育とあわせて検討したい健康経営サポート施策
食事・食育施策に加えて、運動や教育面のサポートを組み合わせることで、健康経営の取り組みに一貫性が生まれ、効果の定着にもつながります。ここでは、食支援と併用することで相乗効果が期待できる代表的な支援策を紹介します。
運動習慣化を促すフィットネス支援
運動習慣の定着は、生活習慣病の予防だけでなく、メンタルヘルスケアにも効果があるため、健康経営における重要な施策のひとつとされています。
近年では、福利厚生としてスポーツジムの利用補助制度や、法人向けフィットネスクラブ会員サービスを導入する企業も増えており、従業員が継続的に運動を取り入れやすい環境づくりが進んでいます。
たとえばCOSPAウエルネスでは、企業のニーズに応じた以下のようなプランを用意しています。
- 共通法人会員:複数拠点での利用に適した全国対応のプラン
- 個店法人会員:特定の店舗に限定したプラン
- 全国法人会員:全国の提携施設を利用できるプラン
- オフィスジムサポート:企業内にフィットネス設備の設置を支援するサービス
食時支援とあわせ、健康経営を強化したい企業は、ぜひ導入をご検討ください。
健康リテラシー向上を支えるセミナー・測定サービス
従業員の健康リテラシーを高める手段として、栄養・運動・メンタルヘルスなどをテーマとしたセミナーや、体力・体組成を可視化する測定イベントの実施も有効なアプローチです。知識と実感をセットで提供することで、より深い理解と行動変容につながります。
COSPAウエルネスでも、体組成測定などを含む出張型のヘルスサポートやオンラインでの健康セミナーなど各種サービスを展開しています。食事・食育施策と併用することで、企業の健康経営推進をトータルで支援することが可能です。
食や運動と組み合わせた健康支援を強化したい企業の皆さまは、ひとつの選択肢として取り入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
食事・食育施策は、従業員の健康維持や生活習慣改善を支えるだけでなく、組織全体の活力や生産性向上にもつながる、健康経営の基盤づくりに欠かせない取り組みです。
健康課題や職場環境は企業ごとに異なるため、自社に適した支援策を見極め、戦略的にプログラムを設計・運用していくことが、健康経営を成功へ導く重要なカギとなります。
COSPAウエルネスでは、食事・食育に関する各種セミナーのほか、ジムの法人契約やオフィスジム設置サポートなど多角的な健康経営支援サービスを提供しています。これから本格的に取り組みを進めたい企業の皆さまは、ぜひ一度ご相談ください。
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