企業にとって「人材」は何より大切な資産。その価値を最大限に引き出すには、社員が健康であることが大前提です。近年、社員の心と体の健康を経営的な視点で捉え、積極的に支援する「健康経営」が注目されています。
本記事では、健康経営の基本から、実際に成果を上げたユニークな事例までをわかりやすくご紹介します。
健康経営とは?基本的な考え方と重要性
「健康経営」という言葉は耳にするものの、具体的にどのような取り組みなのか分からないという方も多いかもしれません。ここでは、健康経営の定義や、その重要性、企業にもたらす効果について詳しく見ていきます。
健康経営が企業にもたらすメリット
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点でとらえ、組織全体の生産性や企業価値の向上を目指す取り組みです。従業員の健康が改善されることで、欠勤や離職の減少、業務効率の向上、企業イメージの向上など、多くのメリットがあります。企業が健康に配慮する姿勢を示すことで、社会的評価も高まり、ブランディングや採用力の強化にもつながります。近年では、経済産業省が主導する「健康経営優良法人認定制度」も普及し、認定を受けた企業は従業員の満足度向上に加え、外部との信頼関係の構築にも成功しています。
経営層が知っておくべき健康施策のポイント
健康経営の成否を左右するのは、経営層の積極的な関与です。経営トップが自ら健康に対する方針を明確に示し、社内にその意義を丁寧に伝えることで、従業員の理解と協力を得やすくなります。例えば、定期健康診断の結果フォローを徹底し、必要な従業員には産業医や保健師のサポートを受けさせる体制の構築が有効です。また、ストレスチェックやメンタルヘルス支援の導入も重要です。さらに、食生活改善のための食堂メニュー見直しや社内ウォーキングキャンペーンなども、従業員参加型の施策として取り入れる企業が増えています。こうした多角的な施策により、従業員が安心して働ける環境づくりが実現します。
健康経営に取り組む際のかんたんステップ5つ
健康経営を始めようとしても、何から手をつければいいのか分からない企業も多いでしょう。この章では、誰でも無理なく取り組める5つのステップに分けて、導入までの流れを紹介します。
会社として「健康を大切にする」方針を決める
まずは企業としての基本方針を明確に打ち出すことが重要です。経営トップからのメッセージや社内報での周知を通じて、「従業員の健康は会社の財産」という意識を共有しましょう。この方針があることで、具体的な施策が単発で終わらず、継続的な取り組みとして根付きやすくなります。さらに、CSR※1やSDGs※2の観点からも、「健康への取り組み」は企業の社会的価値を高める大きな要素となります。
1※CSR(企業の社会的責任)とは
企業が法令を守って利益を追求するだけでなく、社会や環境にも配慮した行動をとる責任があるという考え方です。たとえば、以下のような取り組みがCSRにあたります。
・地域社会への貢献(ボランティア、寄付など)
・環境にやさしい製品づくり
・ダイバーシティ推進や働きやすい職場づくり
・健康経営の導入や従業員福祉の充実
企業が社会課題を意識して行動することで、持続的に信頼される存在になり、結果として企業の成長にもつながります。
2※SDGs(持続可能な開発目標)とは
2015年に国連が定めた2030年までの国際目標です。
全部で17のゴールがあり、「貧困の撲滅」「教育の質の向上」「働きがいのある経済成長」「気候変動への対応」など、地球規模の課題解決がテーマになっています。
企業にとってSDGsは、「社会貢献」の枠を超えたビジネスの新たな方向性を示す道しるべです。たとえば、以下のような健康経営の取り組みもSDGsと連動します。
・従業員の健康支援 → ゴール3「すべての人に健康と福祉を」
・働きがいのある環境整備 → ゴール8「働きがいも経済成長も」
・女性の健康支援 → ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」
社員の健康状態をチェックし、改善できるポイントを見つける
健康経営の第一歩は現状把握です。健康診断だけでなく、ストレスチェックや生活習慣アンケートなども組み合わせることで、より精度の高い分析が可能になります。その結果をもとに、肥満・高血圧・喫煙率などの改善点を明確にし、重点的に取り組む対象を設定します。データを見える化することで、社員自身の意識変容も促しやすくなります。
みんなが続けやすい健康習慣を始める
一人ひとりが日常的に取り組める小さな習慣づくりがカギとなります。例えば、出勤前のラジオ体操や昼休みに階段を使う運動促進キャンペーンなど、気軽に取り組める施策が効果的です。継続性を意識し、部署単位での参加や成果に応じたインセンティブ付与など、楽しみながら健康習慣を根付かせる工夫も求められます。
外部サービスや専門家と連携する
自社で全てをまかなうのではなく、専門家の力を借りることで効果的かつ効率的に健康施策を展開できます。健康セミナーや食生活指導の実施、産業医の定期訪問、フィットネス企業との提携などが一例です。外部リソースを活用することで、従業員にとっても「本格的で信頼できる支援」として受け入れやすくなります。
取り組みを振り返り、改善を継続する
施策を実施したら終わりではありません。年に一度の評価・改善のサイクルを設けることが重要です。従業員からのアンケートを取り入れたり、健康指標の推移を確認したりすることで、次回の取り組みに活かせます。また、成果が出た場合は社内でしっかり共有し、成功体験として組織全体に広げていきましょう。
ユニークな健康経営事例、成功した取り組み5選
「健康経営」と一口に言っても、企業ごとにアプローチの仕方はさまざまです。ここでは、特に注目すべき成功事例をピックアップし、他社の工夫や成果から学べるポイントをご紹介します。
禁煙対策で生産性改善に成功した会社の実践内容
ある製造業の企業では、「敷地内全面禁煙」と「禁煙成功者への報奨金制度」を導入しました。この取り組みにより、喫煙者の割合が年々減少し、喫煙休憩による業務中断も大幅に削減されました。その結果、業務効率の向上とともに、社内の空気環境改善や健康診断結果の改善など、目に見える効果があらわれました。また、禁煙外来の費用を会社が一部負担するなど、従業員のチャレンジを後押しする仕組みも整備されており、健康経営のロールモデルとして高く評価されています。
女性特有の健康課題を支援できる体制を構築
女性社員が多いサービス業の企業では、女性特有の健康課題に着目し、生理休暇の取得促進や婦人科検診への補助制度を導入しました。併せて、女性社員向けの健康セミナーや、相談しやすい環境を整備することで、安心して働ける職場づくりを実現しています。結果として、女性社員の定着率が向上し、育児・介護と両立しながら働く社員の満足度も高まっています。こうした取り組みは、ダイバーシティ推進の観点からも非常に有効であり、他社からの注目も集めています。
「歩数インセンティブ制度」で運動促進を実現
IT企業のある事例では、社員の歩数に応じてポイントが付与される「歩数インセンティブ制度」を導入しました。歩数はスマホアプリで自動計測され、一定の歩数を達成すると、社内カフェで使えるドリンクチケットやオンラインショップのクーポンなどと交換可能です。この制度は、自然と運動量が増えるだけでなく、ゲーム感覚で取り組めることから社員の参加率も高く、健康意識の底上げにつながっています。数値データの集計により、部署ごとの運動量比較なども可能で、チームビルディングにも好影響を与えています。
メンタルヘルスに特化した相談窓口の設置
あるIT系企業では、メンタルヘルスに特化した外部カウンセラーによるオンライン相談窓口を常設しました。匿名で利用可能な仕組みにすることで、従業員が気軽に相談できるよう配慮されています。特に、在宅勤務が中心となる中で孤独感や不安を感じやすい社員にとって、このようなサポート体制は大きな安心材料となっています。利用者からのフィードバックも好評で、ストレスによる休職者数の減少という明確な成果が出ている点も、取り組みの成功を裏付けています。
「健康チャレンジ月間」でチームの一体感を醸成
ある中小企業では、毎年1か月間、部署ごとに健康に関する目標を立てて取り組む「健康チャレンジ月間」を実施しています。歩数、睡眠時間、水分摂取量などの数値目標を定め、達成状況を可視化することで、健康意識を高めながら社内の一体感を醸成する工夫がなされています。社員同士が励まし合いながら取り組むことにより、個人の習慣改善だけでなく、職場全体の雰囲気向上にもつながっています。
中小企業でも可能!コストを抑えた健康支援施策
「健康経営は大企業向け」と考えられがちですが、実際には中小企業でも実践できる取り組みが数多く存在します。この章では、コストを抑えつつも効果的な健康支援施策を紹介します。
オンライン健康セミナーの活用
外部講師による健康セミナーをオンラインで実施する方法は、コストパフォーマンスが高く、中小企業にも導入しやすい施策です。テーマはメンタルヘルス、睡眠改善、食事のとり方、運動不足解消など多岐にわたります。社員は自宅や職場から参加でき、録画を活用すれば忙しい人も後から視聴可能です。社内コミュニケーションのきっかけにもなり、職場に健康意識を定着させるうえでも有効です。
また、株式会社COSPAウエルネスでは、健康経営をサポートするサービスとして、フィットネスクラブの法人契約、オフィスジムの設置サポート、出張・オンライン健康セミナーのほかにも以下のようなプランを提供しています。
- 出張測定イベント(運動指導)
筋力・柔軟性・体組成などを測定、従業員の健康状態を可視化したうえで、改善に向けたアドバイスを提供
- 企業向けオリジナル体操
業務内容や職場環境に即したオリジナル体操を企画・提供し、従業員の健康維持・向上をサポート
企業の規模や目的に応じた最適な福利厚生プランのご提案が可能です。まずは、気軽にお問い合わせください。
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健康食品の補助制度
サプリメントや特定保健用食品などを購入する際に補助を出す制度は、比較的低コストで始められる施策の一つです。従業員の関心を引きやすく、毎日の食生活改善にも直結します。たとえば、血圧対策、腸内環境の改善、栄養バランス調整など、目的別の商品を選べるようにすると、より個々のニーズに合った支援が可能です。制度の導入とあわせて、栄養士による相談窓口を設置するなどのサポートも効果的です。
産業医との連携による課題解決方法
中小企業でも産業医と連携することで、従業員一人ひとりに寄り添った支援が実現できます。具体的には、定期的な面談や健康相談を通じて、メンタル面・身体面両方からのサポートを行います。外部の産業医サービスを活用することで、自社に常駐しなくてもオンラインや訪問で対応してもらえるため、コストを抑えながら導入可能です。従業員の安心感が高まり、企業全体の健康意識も自然と向上していきます。
まとめ
健康経営は、企業の未来を左右する重要な経営戦略の一つです。まずはできることから少しずつ始めてみることが成功への第一歩。社員の健康を支えることが、組織の活性化と企業価値の向上につながるでしょう。中長期的な視点で取り組むことで、離職率の低下や人材定着、生産性の向上など、目に見える成果が得られる可能性も高まります。経営層から現場まで一体となって、無理なく続けられる施策を展開することが、健康経営の鍵です。
COSPAウエルネスでも、今回ご紹介した出張・オンライン健康セミナーのほか、ジムの法人契約、オフィスジムの設置サポートなどのさまざまな支援をおこなっています。以下からご確認のうえ、お気軽にお問い合わせください。
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