腸内フローラという言葉を聞いたことがあると思いますが、腸には1,000種1,000兆個以上の菌がいて顕微鏡で見るとお花畑に見えることからこの様に言われています。
腸内細菌は私たちの健康とは切っても切れない関係であり、量も大切ですが種類のバランスなども重要になってきます。
今回は腸内細菌の働きから、腸内細菌の種類や理想的なバランス、そして腸内細菌を増やす方法などについてもお話していきたいと思います。
腸の3つの働きについて知る
腸は第2の脳とも言われる臓器なので、私たちの身体に与える影響が大きいのですが、実際どのような働きをしているのか詳しくは知らない場合が多いと思います。
- 消化・吸収
- 排便
- 細菌の育成
■腸の働き①「消化・吸収」
腸の中でも小腸で消化酵素や膵液(すいえき)で食べ物を分解し、栄養素を吸収します。また、食べ物から栄養素を取り入れた後は、食物繊維と残りカスが大腸に運ばれることになります。
■腸の働き②「排便」
先ほどお伝えした残りカスと以外にも、新陳代謝で剥がれ落ちた古い細胞や仕事を終えて亡くなった腸内細菌の死骸などが便となって排便されますが、これは大腸の働きです。
■腸の働き③「細菌の育成」
消化・吸収や排便については腸の働きとして認識されていることが多いのですが、実はそれだけでなく腸内細菌をとどめて育てるという働きもあります。これは小腸と大腸の両方で行われていて、小腸では低酸素状態を好む腸内細菌、大腸では無酸素状態を好む腸内細菌が育っています。
腸内細菌の働きについて
実は私たちの腸内には600兆~1000兆の細菌がコロニー(細菌の集まり)を形成しています。数が多いので全体の重さとすると1kg~2kgもあるのです。また、これらの細菌を顕微鏡で見るとお花畑に見えることから、腸内フローラと呼ばれる様になりました。そんな腸内フローラ(腸内細菌)の働きは、私たちの体調管理に欠かすことのできない存在です。例えば食中毒だとすると、同じものを食べて食中毒になる人・ならない人と別れますが、食中毒にならない人は、腸内に病原菌が入ってきた時に腸内細菌が撃退してくれているからであり、食中毒になる人は腸内細菌が少ないので撃退できないという場合もあります。
また、小腸のパイエル板という免疫器官では、免疫細胞と腸内細菌と病原菌や異物と戦わせながら免疫細胞を鍛える機能があると最近の研究で分かりました。この機能が働き免疫力が上がることによりアレルギーなども発症させないで済むこともあるでしょう。 その他にも腸と脳は迷走神経で繋がっていますので、腸内環境が悪いと精神的にも安定しない状態に陥ることもあります。 腸内の話になると基本的には便秘関連かと思いがちですが、実はそれ以外の事柄がかなり多く関係しているのです。
腸内細菌は3種類ある?「善玉菌・悪玉菌・日和見菌とは?」
腸内細菌と一言にお伝えしておりましたが、実は腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と3種類に分類されております。
日和見菌以外の菌は聞いたこともあるかと思いますが、ここでは3種類の菌の働きの違いと、これらの腸内細菌の理想的なバランス関係についてお伝えしたいと思います。
■善玉菌とは
有名な菌で言うとビフィズス菌などが善玉菌に分類される菌ですが、善玉菌とは腸内を弱酸性に保ち、外部から入ってくる病原菌を撃退して腸内環境を整えてくれる菌です。代表的な善玉菌は以下になります。
<ビフィズス菌>
腸内環境を整えてくれること以外にも、腸の細胞を強化して悪い菌を撃退する酢酸を作る。
<乳酸菌>
腸内環境を整えてくれる乳酸を作る。
<酪酸菌>
腸内環境を整える酪酸などの短鎖脂肪酸を作る。
■悪玉菌とは
逆に悪玉菌とは、毒素を作り出し腸内をアルカリ性にします。病原菌を撃退してくれる善玉菌とは逆で、アルカリ性は多くの病原菌が好む環境です。しかし、肉などのタンパク質を分解するのも悪玉菌なので必要な菌ではありますが、増え続けると悪影響があります。 代表的な悪玉菌は以下になります。
<ウェルシュ菌>
赤ちゃんの時はいないが、年齢を重ねて高齢になるほど増えていくケースが多い腐敗菌。
<大腸菌毒性株>
毒性のある大腸菌。
<緑膿菌>
抗生剤に強く、すぐに薬剤の耐性が付いてしまう菌。
■日和見菌とは
善玉菌と悪玉菌というワードは聞いたことがあると思いますが、こちらの日和見菌(ひよりみきん)については初めて知った方も多いのではないでしょうか。日和見菌とは、善玉菌と悪玉菌のどちらかの味方をする菌なのですが、どちらの味方をするかというと数が多い方を味方にします。 代表的な日和見菌は以下になります。
<バクテロイデス>
通称「痩せ菌」。野菜を多く摂っていると増えやすくなり、脂肪を身体に溜めにくくする。
<フィルミクテス>
通称「デブ菌」。脂肪を吸収しやすく溜めやすい身体にする。
<大腸菌無毒株>
悪い菌の繁殖を予防してくれたり、ビタミンを作る。
■腸内細菌の理想的なバランスとは
善玉菌と悪玉菌と日和見菌について簡単に紹介しましたが、一見悪者に見える悪玉菌にも肉などのタンパク質を分解するなど仕事があります。 腸内細菌は善玉菌がとにかくたくさんあれば健康になるという様な考え方ではなくバランスが大切となります。理想的な腸内細菌のバランスは「善玉菌(20%):悪玉菌(10%):日和見菌(70%)」とされています。
腸内環境を改善させるための「腸内細菌の育て方」
ここまでに腸内細菌の働きやその種類についてお話しましたが、ここからは腸内細菌をどのように育てていけば良いのかといったことをお伝えします。腸内細菌を育てるには、腸へのダメージを減らしながら、腸に良いものを食べていくことがおすすめです。
■腸へのダメージを減らすには
では、まずは腸へのダメージを減らすために知っておくと良い情報をお伝えします。
<食品添加物>
食品添加物は、食べても危険性が小さいものや大きいものと様々です。
毎日摂っても問題ないものは「キサンタンガム(増粘剤)」「甘草(甘味料)」「クチナシ色素(着色料)」「エリスリトール・キシリトール(甘味料)」であり、安全性が高いが少し注意が必要なものが「ソルビトール(甘味料)」「ステビア」「トレハロース(甘味料)」です。また、危険性が高いものとして「タンパク加水分解物」「トランス脂肪酸」が挙げられます。
<抗生物質>
全ての抗生物質という訳ではありませんが、腸内環境を荒らす原因となる抗生物質もありますので、安易に多様することは避けましょう。
<タバコ>
タバコに含まれるニコチンは、脳や胃腸を含めて全身の血流を悪くし、消化器官の粘膜を弱くしてしまいます。
<アルコール>
お酒も腸内環境を荒らしますので、休刊日を作ったり、胃に何か入っている状態から飲みだすなど意識していきましょう。
<砂糖>
砂糖は悪玉菌の大好物なので、腸内で悪玉菌を増やすことになります。 この様に腸へ与えるダメージを減らす様にしていきましょう。それと同時に以下の腸に良いものを食べていきます。
■腸に良いものを食べる
では、続いて腸に良いものについてお話します。腸に良い食べ物の代表は「発酵食品」と「食物繊維」です。
<発酵食品>
発酵食品は微生物で分解された状態なので、腸で分解する手間が省けて消化吸収しやすいおすすめな食べ物です。 また、発酵食品の代表的な菌で乳酸菌がありますが、植物性の乳酸菌は動物性に比べて熱に強いので、生きたまま届きやすいので菌の補充に役立ちます。 おすすめな発酵食品は、野菜の漬物・納豆・味噌・梅干しです。
<食物繊維>
食物繊維には水溶性と不溶性とあり、水溶性は水に溶け不溶性は水に溶けない食物繊維です。これらのバランスは擦溶性(1):不溶性(2)が理想とされていて、水溶性は善玉菌の栄養となり、不溶性は排便を促進してくれる働きがあります。 おすすめな食物繊維を含んだ食材は、長芋・玉ねぎ・玄米・切り干し大根です。
腸内細菌についてのまとめ
私たちの健康に欠かすことができない存在である腸内細菌。
一言に腸内細菌といっても善玉菌・悪玉菌・日和見菌と3種類の腸内細菌に分類でき、これらのバランスは「善玉菌(20%):悪玉菌(10%):日和見菌(70%)」です。また、より健康な日々を送る為に腸内細菌を育てていくことも大切で、腸へダメージがかかる習慣には注意を払いつつ、腸に良い食材を食べていきましょう。