「福利厚生がない会社って本当にあるの?」そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。本記事では、福利厚生の法的な義務や企業に与える影響、導入しないことで生じるリスクを詳しく解説します。
さらに、採用力や社員満足度の向上につながる福利厚生の具体例や導入のポイントも紹介しておりますので、制度設計の参考にご活用いただければと思います!
目 次
福利厚生がない会社はどうなる?
国内企業の福利厚生に関する実態
日本国内における企業の福利厚生制度は、法定福利厚生と法定外福利厚生に大別されます。総務省「就労条件総合調査(2023年)」によれば、正社員を対象とする法定外福利厚生の実施率は9割を超えており、多くの企業が何らかの形で福利厚生制度を導入していることが分かります。
一方で、非正規社員への適用率は低く、企業規模による格差も顕著です。特に中小企業ではコストや運用の難しさから、福利厚生制度が十分でないケースも見受けられます。福利厚生は単なるコストではなく、従業員の満足度向上や企業の競争力強化に寄与する投資として捉えられるようになってきています。
法令で定められている法定福利厚生とは?
法定福利厚生とは、企業が法律により義務付けられている福利厚生制度です。主に健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つが基本となっており、一定の条件を満たす労働者に対して企業はこれらの保険料の一部を負担し、加入手続きを行う責任を負います。
これらの制度は、労働者の生活を守り、安心して働ける環境を提供するための最低限のセーフティネットです。企業がこれらを適切に運用していない場合、法令違反とみなされ、監督機関から是正指導や罰則を受けることもあります。
「福利厚生なし」でも問題ない労働条件とは
企業が福利厚生をまったく提供しないことは原則として認められていません。特に法定福利厚生は法的義務があるため、未加入での雇用は違法です。
ただし、法定外福利厚生については導入が義務ではないため、最低限の法定福利厚生※のみを整備している企業も存在します。
とはいえ、労働市場における競争が激化する中で、福利厚生が乏しい企業は求職者からの選択肢から外されるリスクが高くなる可能性があります。労働条件としての最低ラインは守られていても、「福利厚生なし」の状態は、企業としての魅力を損なう要因となり得ます
※企業が法律で義務づけられている福利厚生
- 1:健康保険
従業員が病気やけがをした際の医療費を一部負担する制度。医療費の自己負担が軽減される他、休業時の傷病手当金なども支給されます。 - 2:厚生年金保険
老後の年金受給や、障害・死亡時の保障を目的とした制度。国民年金に上乗せされる形で支給され、将来の生活を支えます。 - 3:雇用保険
従業員が失業した際に給付金(失業手当)を受け取ることができる制度。再就職支援や教育訓練給付なども含まれます。 - 4:労災保険(労働者災害補償保険)
業務中や通勤中の事故・災害によるけがや病気に対して、治療費や休業補償などを行う制度です。 - 5:介護保険(40歳以上の従業員対象)
要介護状態になったときに、介護サービスを受けられる制度。介護が必要な高齢者の生活支援を目的としています。
福利厚生を導入しないデメリットとは
企業の評価・信頼度が下がり、採用活動が難しくなる
現代の求職者は給与だけでなく、福利厚生を含めた「働きやすさ」や「企業文化」に重きを置いて企業選びを行う傾向があります。福利厚生が整っていない企業は、求職者にとって魅力に欠ける存在となり、優秀な人材を惹きつけることが難しくなると考えられます。
特に若年層を中心としたミレニアル世代・Z世代では、ライフワークバランスを重視する傾向が強く、福利厚生の充実度が企業選定の決め手になるケースも少なくありません。福利厚生が不十分な企業は、採用時点で候補者から敬遠されやすく、採用活動における課題が生じやすくなります。
会社全体の生産性が落ちる
福利厚生が整っていない職場では、従業員の満足度やエンゲージメントが低下しやすくなります。結果として、モチベーションの低下、業務効率の悪化、さらには体調不良による欠勤や早期退職といった課題が発生する可能性があります。
たとえば、健康診断の未実施やメンタルケア不足は、従業員の健康リスクを高め、長期的な戦力ダウンにつながる懸念もあります。従業員が安心して業務に集中できる環境づくりは、企業の生産性向上に貢献するとされます。福利厚生の不備は、短期的にはコスト削減に映るかもしれませんが、長期的には企業の競争力に影響を及ぼすリスクがあります。
従業員の離職率が高まる
福利厚生の充実度は、従業員の定着率にも影響を与える要因の一つです。特に長時間労働や低賃金といったマイナス要素がある場合、福利厚生がその"埋め合わせ"としての役割を果たすこともあります。
反対に、福利厚生が乏しい企業では、従業員が「この会社で長く働く理由」を見いだしづらくなり、転職を選ぶケースが出てくるかもしれません。結果として、ノウハウの蓄積や組織力の維持が難しくなり、企業としての成長にも影響を及ぼす可能性があります。従業員の満足度を高める福利厚生制度は、離職率の低下と組織の安定に寄与する施策として注目されています。
福利厚生を充実させるメリット
採用活動時に、「自社の強み」になる
人材獲得競争が激しさを増すなかで、福利厚生は企業が掲げる「働きやすさ」や「社員を大切にする姿勢」の象徴として機能します。福利厚生制度が充実していることは、求人広告や採用説明会などで自社の魅力を訴求する大きな要素となり得ます。
たとえば、柔軟な働き方を支援する制度や育児・介護との両立を支援する制度があることで、多様なバックグラウンドを持つ人材の応募を促す効果も期待できます。また、他社にはない独自の福利厚生を導入している企業は、競合と差別化を図る上で有利に働くでしょう。結果として、企業の採用力を高める一助となる可能性があります。
従業員のモチベーションが上がる
従業員が安心して働ける環境が整備されていると、自社に対する信頼感や満足度が高まり、日々の業務への意欲にも良い影響をもたらします。特に、福利厚生がライフイベントや健康面に寄り添った内容であれば、社員一人ひとりの生活の質向上にもつながり、長期的なモチベーション維持が期待できます。
また、職場内のコミュニケーション活性化や帰属意識の向上にも寄与するため、職場全体の雰囲気や連携体制の強化にもつながるでしょう。企業が従業員の声に耳を傾け、ニーズに応じた福利厚生を柔軟に設計することが、エンゲージメント向上の鍵となります。
節税対策になる
福利厚生の一部は、企業の経費として認められるケースがあります。たとえば、一定基準を満たす社員食堂の運営費や健康診断の費用、通勤手当などは、福利厚生費として損金算入が可能です。これは、企業の財務的な負担を軽減する要素にもなり得ます。
また、現金給与と比較して課税対象とならないケースもあるため、従業員にとっても手取り額の維持につながるメリットがあります。制度設計にあたっては、税制上の条件や会計処理の適正性を確認する必要がありますが、うまく活用することで企業と従業員双方にとって有益な仕組みとなる可能性があります。
企業ブランド価値が向上する
福利厚生制度の充実は、企業の社会的責任や働きやすさへの配慮を象徴する要素として、社外からの評価にも影響を与えることがあります。
たとえば、社員の健康促進やワークライフバランスの実現を支援する取り組みは、メディアやSNSで取り上げられる機会もあり、結果として企業のイメージ向上につながる可能性があります。
特に、若年層や次世代の就労者が企業選びで重視するのは、給与額以上に「働きがい」や「企業姿勢」とされることも多く、福利厚生はそうした価値観に寄り添う重要な施策です。ブランディングの一環として福利厚生を戦略的に設計・発信していくことも、今後は企業競争力のひとつといえるでしょう。
福利厚生を新たに導入する際の3つのポイント
導入目的を明確にする
福利厚生を新たに導入する際は、まず「なぜ福利厚生を整備したいのか」という目的をはっきりさせることが重要です。
例えば、社員の健康増進や働きやすさの向上、離職防止、採用力アップなど、目的に応じて適した制度内容が変わってきます。目的が明確でないと、導入後に社員のニーズと合わなかったり、期待した効果が得られないリスクも考えられます。そのため、経営層や人事担当者は現状の課題を洗い出し、福利厚生導入によって何を改善したいのかを整理してから検討を進めることが望ましいでしょう。
社員が自由に選択して利用できるようにする
福利厚生制度は、社員一人ひとりの価値観やライフスタイルに合ったものを提供できることが理想です。近年では、社員が複数の福利厚生メニューから自由に選択できる「カフェテリアプラン」が注目されています。その一形態として、あらかじめ付与されたポイントを使ってサービスを選べる「ポイント制度※」も導入が進んでいます。
こうした選択制の仕組みを取り入れることで、利用者満足度が高まり、より効果的に従業員のニーズに応えられる可能性が期待できます。社員の声を反映し、柔軟に制度設計を行うことが、導入後の活用促進にもつながるでしょう。
※ポイント制度の詳細については、以下記事もご参照ください!
福利厚生のポイント制度とは?仕組み・活用例から導入方法まで徹底解説
導入費用・運用費用をシミュレーションする
福利厚生を導入する際には、制度設計とともに費用面の検討も欠かせません。初期導入費用だけでなく、継続的な運用コストや管理の手間も考慮する必要があります。
特に中小企業では、コスト負担が大きくなりすぎると継続が難しくなる可能性があるため、事前に費用対効果をシミュレーションしておくことが望ましいです。必要に応じて外部サービスの利用やアウトソーシングも検討し、無理のない範囲で福利厚生を整備することが大切です。
法定福利厚生以外で「社員に喜ばれる」福利厚生とは
住宅補助
住宅補助は、従業員の生活基盤を支える福利厚生の一つです。家賃の一部補助や社員寮の提供など、住環境の安定は社員の安心感につながり、仕事への集中力や定着率の向上に寄与すると考えられます。特に都市部や転勤が多い企業では、住宅関連の福利厚生が重要視される傾向があります。
特に都市部や転勤が多い企業では、住宅関連の福利厚生が重要視される傾向があります。
勤務時間・休暇関連
フレックスタイム制度やテレワークの導入、有給休暇の取得促進、育児・介護休暇など、多様な勤務時間や休暇制度は働きやすさを高める効果があります。柔軟な働き方を支援することで、ワークライフバランスの実現をサポートし、社員の満足度向上にもつながるでしょう。
食事関連
社員食堂や食事補助の制度も、社員の健康や福利厚生の満足度を高める要素の一つです。忙しい業務の合間に栄養バランスのとれた食事が手軽に取れる環境は、体調管理や生産性の維持に役立つとされています。
医療・健康補助
健康診断や人間ドックの充実、スポーツジムの割引利用、メンタルヘルス相談窓口の設置など、健康面のサポートは近年特に注目されています。こうしたサービスを活用することで、企業は従業員の健康増進とともに医療費の適正化にもつなげやすくなります。
こうしたサービスを活用することで、企業は従業員の健康増進とともに医療費の適正化にもつなげやすくなります。
株式会社COSPAウエルネスでは、福利厚生代行サービス(WELBOX)や、運動施設(コ・ス・パ・FITBASE24)の無料利用・スポーツスクールの割引制度等、社員の健康管理に特化した福利厚生サービスを提供しており、定期健康診断やメンタルヘルス支援、生活習慣改善プログラムなどを通じて企業の健康経営をサポートしています。
慶弔・災害関連
慶弔見舞金や災害時の支援制度も、社員の安心感を支える福利厚生のひとつです。人生の節目や予期せぬトラブルに対する企業の手厚い支援は、社員からの信頼を得やすく、組織の一体感向上にも寄与するとされています。
まとめ
福利厚生は、法定福利厚生を遵守することはもちろんのこと、法定外福利厚生をどのように充実させていくかが、企業の採用力や従業員満足度、ひいては企業競争力に大きな影響を与えています。福利厚生を新たに導入する際は、目的を明確にし、社員が利用しやすい制度設計と、無理のない費用計画が重要です。
株式会社COSPAウエルネスでは、健康経営をサポートするサービスとして、フィットネスクラブの法人契約、オフィスジムの設置サポート、出張・オンライン健康セミナーのほかにも以下のようなプランを提供しています。
- 出張測定イベント(運動指導)
筋力・柔軟性・体組成などを測定、従業員の健康状態を可視化したうえで、改善に向けたアドバイスを提供
- 企業向けオリジナル体操
業務内容や職場環境に即したオリジナル体操を企画・提供し、従業員の健康維持・向上をサポート
企業の規模や目的に応じた最適な福利厚生プランのご提案が可能です。まずは、気軽にお問い合わせください。